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米国で起きた炭疽菌事件について説明するアンソニー・T・トゥ順天堂大客員教授(11日、東京都内)
　炭疽菌やサリンといった生物・化学剤のテロで患者が発生した場合、どう対処すべきか―。東京都内で11日に開かれた災害対策の講演会で、研究者や専門家、東京消防庁のNBC(核・生物・化学)災害対策の担当者がウイルスの検出方法などを取り上げ、対応のポイントや防護方法の重要性を訴えた。【新井哉】
　生物・化学剤をめぐっては、オウム真理教による地下鉄サリン事件に加え、米国防総省が今年6月、米軍の研究所が韓国などの研究施設に炭疽菌のサンプルを誤って送付し、2005年に日本国内にも持ち込まれていたことを明らかにするなど、取り扱いの厳格化や検出・防護といった対策が喫緊の課題となっている。
�0講演では、生物・化学剤のテロに詳しい順天堂大のアンソニー・T・トゥ客員教授(コロラド州立大名誉教授)が、01年に米国で起きた炭疽菌事件について詳述。「FBIが炭疽菌のDNAを分析した結果、米陸軍の炭疽菌との差が4つしかなかった」とし、元米軍関係者が関与していた可能性を指摘。また、その場で治療が可能な英国のモバイル・ホスピタルや個人防護具を取り上げ、検出や除染、治療などの重要性を説いた。
　また、東京消防庁警防部特殊災害課の大島信哉課長補佐(NBC災害対策担当)が、NBC災害について、▽災害実態を五感で感じることが困難な場合が多い▽活動には専門的な知識と装備・資機材が必要▽適切な身体防護が不可欠―といった特徴を提示。東京消防庁が化学防護服や携帯型生物剤捕集器などを配備し、検知や除染、救護活動を展開できる能力を持っていることを説明した。
　国立保健医療科学院健康危機管理研究部の金谷泰宏部長は、生物テロ対策と感染症法との関連や、地方衛生研究所の検査体制などを解説。生物剤として利用される恐れのある病原体として、炭疽菌と天然痘ウイルスを挙げ、炭疽ワクチンが厚生労働省の承認を得ていないため、国内で販売されていないことや、天然痘の出血型がエボラ出血熱に近い死亡率になることを説明した。
　今回の講演会は、「災害対策について『伴に』考える研究会」(世話人=坪内暁子・順天堂大大学院医学研究科助教)と順天堂大医学部総合診療科（内藤俊夫先任准教授）が開催したもので、聴講した順天堂大医学部5年生の荒井雄太さんは「市民レベルでこうした情報を共有することが大事だと思う」と述べた。